大道芸通信 第369号
古風俗画本に見る生業
古風俗画本のなかには 現在では見ることの出来ないものや見ただけではどんなものであったかわからなくなったものも少なくない。発声練習などで使われている「小田原外郎」なども そんな一つである。今外(うい)郎(ろう)と言われて、誰もが想像するのは羊羹状の菓子である。しかし小田原外郎は、仁丹みたいな丸薬?である(実際には仁丹の方がまねをしたのだろうが、現在ではその方が通じるからそう呼んでいるだけ。店内では菓子の外郎も売っている)
⚫十六部(『大和耕作絵抄』)
六十六部は、全国六十六カ国の霊場に法華経を一巻ずつ納める行者や修行僧のこと。実際には年中江戸にいながら、お布施だけ集めるインチキ行者が多かったようである。ちなみに、西国三十三ヵ所巡りを巡礼、四国八十八箇所巡りを遍路と言って区分している。
⚫八瀬の黒木売と大原の柴売り(『百人女郎品定』)
黒木は赤木(のち白木)に対し皮のついたままの丸木のこと。一尺(約三十糎)前後に切り揃えた生木をかまどで黒く蒸し焼きにして薪にしたもの。八瀬や大原で作られ京市中へ売り歩いた。柴は雑木の小枝のことだが、こちらは乾燥させて薪とした。
八瀬も大原も京都の東北の外れ、滋賀県との境。どっちが八瀬か大原かよそ者にはわからないけれど、三千院のあるのが大原で、僅かに市中へ近い修学院があるところが八瀬のようだが、地図で見ただけ。実際には知らない。
⚫鳥刺しと魚売り(『絵本家賀御伽』)
鳥刺しは 竿の先ン鳥もちをつけた長い竿を持っている人。鷹狩用鷹の餌とするための小鳥を捕まえる仕事。大名家の庭だろうがどこだろうが どこにでも入って取りを捕まえることができたといわれるが未確認情報。
その前で天秤棒を担いでいる鵜足は魚売り。腐らないうちに売り切るため、足早に歩いている。
⚫ 蛇(くちなわ)遣い(『絵本家賀御伽』)
縄のように丸め手に持ったり懐へ入れたりして子供たちをからかっているが、子供も喜んでいるようである。
⚫枕の曲梯子の○○〇(『絵本御伽品鏡』)
枕の曲は「箱枕」九個にお椀を二つ使ったようである。上のお椀には水が入っているし下のお椀は糸底の上に箱枕七つを載せる、見るからに不安定な載せ方である。大変な技だが、今これが出来る人はいない。何時でも見れるのは、箱三個を挟んだり左右入れ替えたりするものばかりである。これなら少し練習すれば子供でも出来る。何れにしろ、習得が簡単なものはすぐ縫う真似られるし飽きられるのも早い。とりわけ和物大道芸は、伝承者は皆高齢の上、ちゃんと継承しようとする若者は殆どいない。ぜめ危惧種である所以だ。
⚫酒中花 (『絵本家賀御伽』)
酒中花は、主に首席に興を添えるために用いられたようである。古典にはよく出てくるが今ひとつ実感がわかないのは見たことがないからである。山吹の茎の髄で課長を造り、押しちぢめておき、酒に浮かべると膨れて開くとあるが、やっぱり具体的にはわからん
⚫『絵本御伽品鏡』と『絵本家賀御伽』
前者は享保十五年(一七三〇) 後者は寛延五年(一七五二の奥付だが、寛延四年に宝暦に改元、実際には宝暦二年)板。『絵本御伽品鏡(おとぎしなかがみ)』は、当事大坂の路上で行われていた生業をえがいている。『絵本家賀御伽(かがみとぎ)』は大坂に加え京や江戸、小田原外郎や江戸のかねやす等、店売りや店舗の様を描写している。両書とも長谷川光信画。 長谷川庄蔵(光信の本名)は大阪在住の浮世絵師だが、生没年は不詳のようである。活動時期については、享保六年(一一七二一) 板行の『花王伊勢物語』に「摂陽大和画師長谷川光信」と名があるのが最初で 『日本三階名物図会』(宝暦四年板)が確認できる最後とか。ウィキペデイアによる
大道芸の会会員募集
ワシントン条約は言わずもがな芸能界からさえ無視され続けられている絶滅危惧種「日本の大道芸」を一緒に伝承しませんか 稽古日は左記の通りです
●第三六九回 九月十二日(水(すい))
●第三七〇回目 十月十三日(水(すい))
時間・午後六時ー七時半
場所・烏山区民センター 大広間(二階)
また、歴史や時代背景を学び、或いは技術を向上させたい人(オンリー・ワンやナンバー・ワンを目指す人)のために、一名から学習会や特別講習も行っています。
●日時 ・場所(随時)
随時HP掲示板(ほーむぺーじけいじばん)等で通知
編集雑記
暑さ寒さも彼岸まで。戦争話はお盆まで。八月と共に始まる戦争話も旧盆(八月十五日)を過ぎると、途端に消える。しかし今年は終戦七十七年とかで、お盆以降も戦争話は続いている。また漫画家の水木しげる生誕百周年とかで、妖怪漫画と共に『総員玉砕せよ』も反戦漫画である。『のんのんばあとオレ』『百鬼夜行』と共に、水木漫画の原点である。
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