大土芸通信 第321号


去る九月二十九日(土)、通算十二回目の「江戸の物売りと大道芸」(深川江戸資料館主催)が、無事終わった。朝のうちは曇であったが始まる頃には雨になった。そのためもあってか、期待したよりも客足は伸びなかった。それでも午前の一回目は、八十名ぐらいの観客が座席を埋めてくれた。
午後は更に雨脚が強く、二回目の客足が危ぶまれたが、こちらも一回目と同じくらいであった。後から深江戸の方から報告があったが、全体で約百六十名と云うことであった。何れにしろこれまでのワーストタイである。雨のためだけなら救われるが飽きられたのなら救いがない。答えは次回に出るだろうが、前者であることを祈るばかりである。
今回もアンケートを取ったが、総数七十六通(男女比は、男性三十七通に対し女性は三十九通返ってきた。これまでで最高の数字である。資料館の方で一点毎に筆記具を附けてくれたことと、皆が回収に努めてくれたからである。
年齢構成は、六〇代七〇代が圧倒的だが、若い人が増加傾向にあることは嬉しいことである。以下実数を紹介する。
○年齢構成
一二歳以下 一名
一九~二九歳 八名
三〇代 二名
四〇代 七名
五〇代 一〇名
六〇代 二〇名
七〇代以上 二二名
○観客の居住地は変化に富んでいた(数字は員数)
江東(七)、江東以外の都内(二九)、千葉(七)、埼玉(七)、神奈川(一三)、その他(一二)
○公演を何で知ったか
江東区報 六名
ホームページ 七名
ポスター 三名
チラシ 一二名
知人・友人 二三名
日本大道芸・大道芸の会一名
その他 一六名
○公演内容は
満足 四一名
やや満足 一〇名
やや不満 〇名
不満 〇名
○印象に残った演目(複数可)
(A)物売り
①季節の物売り 三七名
②あさり売り 二六名
③かりんと売り 一九名
○次はったい粉売り一六名
(B)大道芸
①女霊媒師 四四名
②南京玉すだれ 四三名
③神霊術 三二名
○次虚無僧流し 一九名
○意見感想
・なにかうる(何か売る)ときは大きな声でいわなきゃいけなくてたいへん(大変)だなと思いました。いろいろな江戸の町を知ることができてうれしかったです(12歳以下女・江東)
・面白かったです(19~29女・港)
・もっと色々な声も聴いてみたい。実際にやってみたい(19~29女・都内)
・とても楽しかったです。長く続けていただきたいです。ありがとうございました(19~29女・神奈川)
・横綱の展示を目当てに来ましたら運良く催しも見ることが出来楽しかったです。大坂の人間ですので江戸とは又違うのだなと思って拝見しました(30代女・大阪府)
・しげちゃんがとってもよかったです(40代女・千葉)
・しげちゃんさん素敵な声でした(40代女・江東)
・「横綱72人の選ばれし……」を見たくて深川江戸資料館へ来ましたが、江戸の町の長屋、大道芸などを見る事が出来てよかったです(40代女・佐賀)
・MCの声が何言ってるか聞取り辛かった(40代女・江東)
・あさり売りの男の子がかっこよかった。物売りの人たちは皆さん張りのある声で素晴らしかった(50代女・その他)
・江戸の雰囲気が出ていました(50代男・岩手)
・とても楽しく拝見させていただきました。物売りの方の息の長いのには驚きました。お若いわけだとしげちゃん。江戸の賑わいを感じられ人と人とのふれあい。古き良き時代みたいな……有難うございました(50代女・世田谷)
・催し物に出くわせてラッキーでした。ありがとうございました(50代男・江東)
・語りあり合奏あり。尺八の鶴の鳴き合せの名演奏等よかったです。男性は正絹の着物で虚無僧は帯の後に印籠を挟めて対したものです。石を持上げる芸はお客さんを呼び込んでゲスト出演させて雰囲気最高でした。有難うございました(60代男・神奈川)
・琵琶葉湯参考になりました(60代女・江戸川)
・とてもよかった。生で見れてよかった。観客と近いのでやりとりも(60代男・台東)
・とてもよかった。楽しいひとときでした(60代女・埼玉)
・どの演目も素晴らしいものでした。(物売りの価格等当時の相場も色々でしょうが)売る量と値段等を一緒に案内していただけると参考になります(60代女・都内)
・細かく説明して下さって楽しかったです。神霊術が長い(60代女・埼玉)
・細かく説明して下さって楽しかった(60代女・埼玉)
・日比谷大江戸祭を企画・開催している者です。大いに参考になりました(60代男。江東)
・今日のイベント過去に見たことがありますが、その時よりわかりやすくバージョンアップしていて素晴らしいと思います。もっと多くの人に見ていただきたいですね。ありがとうございました(60代女・江東)
・がまの油を是非やって下さい(60代男・江東)
・目の前で生で(ライブ )見ることが出来ました。お稽古の成果がよく出ていました。これからもますますのご活躍を期待してます(60代男・千葉)
・出演者全員が一生懸命で好感を持ちました。昔は人がいるとこに行って物を売ったという最初の説明や極力ムダなものを買わないという徹底したエコ。今のように大量生産、資源の無駄遣いをしない。これからの環境、地球の持続を考える上で大事な視点があるような気がします。大道芸万歳!(60代男・神奈川)
・大切なことです。是非継続して下さい(60代男・新宿)
・玉すだれ素敵でした(70以上女・都内)
・江東区はいい文化事業をやっている(70以上男・新宿)
・神霊術、後の人が見えないので台の上でやって戴きたかったですが……面白く見せて戴きました(70以上女・新宿)
・近くだったら会員になりたい!(70以上女・板橋)
以上である。概ね好評であるのは提出した人だからである。提出しなかった人の意見も聞いてみたいとは思うが、不可能なことだから考えても意味はない。一生懸命考え提出してくれた人を大事にすべきだろう。今回もあったが、又来たいと思わせることが大事である。それにはレベルアップが欠かせない。
次回は、来年三月十六日(土)に決まった。今度はどんな切り口を見せたら喜ばれるか考えたい。
『名物鹿子』
豊嶋治左衞門著 豊嶋弥右衞門撰 板元 須原屋与兵衛 享保十八(1733)刊
俗称『江戸名物鹿子』は絵入り俳諧本というより絵の説明に俳諧を利用したと云う方が相応しい。これに大道芸を含む様々な生業が載っている。これまでに紹介したものもあるが、大分時間が経っているので忘れていることも多い。何より紹介した小生自身が忘れている。重複することは承知の上で紙面の限り紹介してみる(順不同)。
①松井源左衛門(右)
隅田川蜆(左)
②塩瀬饅頭(右)
葛西海苔(左)
③浅草張り子(右)
両替町金銀(左)
④生姜市(右)
長坂元結(左)
⑤岩井町合羽(右)
堀江町団扇(左)
⑥和蘭陀宿(右)
小網町白魚(左)
⑦こんこん坊(右)
雑司ヶ谷蕎麦切(左)
享保頃は隅田川で蜆、(しじみ )葛西で海苔(のり)、小網町で白魚(しらうお)が取れたのである。雑司ヶ谷蕎麦(そば)は、雑司ヶ谷鬼子母神境内の藪に店を開いたことから「藪蕎麦」と呼ばれていた。現在隆盛を誇る藪蕎麦の発祥地が此処である。「こんこん坊」は、後に『只今御笑草』も載せる「狐坊主」である。
大道芸の会会員募集
「南京玉すだれ」や「がまの膏売り」など、日本庶民の伝統文化「大道芸」を一緒に覚えませんか。練習日は左記の通りです。
●第三一八回目 十一月十四日(水(すい))
●第三一九回目 十二月十二日(水(すい))
時間・午後七時ー九時
場所・烏山区民センター 大広間(二階)
また、歴史や時代背景を学び、或いは技術を向上させたい人のために、学習会や伝承会も行っています。
●日時 場所(随時)
開催日はHP掲示板(ほーむぺーじけいじばん)や当蘭で連絡します
編集雑記
今回のアンケートに、小生の「神霊術」が長すぎるという意見があった。大道芸の真髄は、「嫌なら帰れ」といいながら、最後まで帰さないことにある。簡単に結論は出さない。終わると見せかけて、別の話を始めるのも、商品に付加価値をつけ欲しくさせるための技(わざ)である。今は物を売らないから関係ないようだが、真剣勝負であることに変わりはない。途中で客が帰ったら演者の負け。ジリジリしながらも最後まで残らせたら演者の勝ちである。